美しいか、美しくないか(吉元由美)

「神道には教えがないのです」と熊本の幣立神社の神主さんが言った。教えがなければ、何があったのか。それは「美しいか、美しくないか」と判断する感性。「その行為は美しいのか」と自分に問い、判断する感性だ。 どんなに古い神社でも、隅々まで掃き清められている。大祓詞には「祓へ給え 清め給へ」とある。何を祓い清めるのか。犯した罪や心身の穢れを祓い清める。そこに「美しいか、美しくないか」という基準がある。 少々苦労をしても最善を選ぶのか、ただ損か得かで選ぶのか。そこには常識や良識を超えた研ぎ澄まされた叡智がある。それは特別な人だけが持っているのではなく、誰の心の奥にも宿っている。